家を離れた子供の思い
“大学進学を機に18歳で家を出た。
25歳で職場結婚をし、28歳で子供を授かり、32歳の時にマンションを買った。
現在、私は50歳、一人娘は大学生になり手が掛からなくなった、残り数年でマンションのローンは返済できる。
「また、見てるの?」、パソコンをしている私に声を掛けてきたのは同い年の妻。
50歳になってからの私は、ネットを使って実家の画像を良く見ている。
私の実家はサラリーマンの父親が建てた一軒家、私が小学生の時に建てたため築40年。
家を出た18歳の時にはキレイだった実家、妻を初めて実家に連れて行った時には「素敵なおうちね」と妻は言ってくれた、しかし、ネット画像で見る実家は塗装がハゲずいぶん傷んでいるように見える。
定年退職をし限られたお金でやりくりしていては、家の塗装をする余裕はないのだろう、そのことが家を出た私にはずっと気掛かり。
サラリーマンをしている私の小遣いは月7万円、妻にナイショのヘソクリは30万円弱、2つを合わせても40万円弱、40万円弱で実家の塗装が出来るだろうか?
妻に小遣いの前借りをお願いすると、
妻、「何に使うの?まだ、子育てにお金がいるのよ」
私、「実家の塗装をしたいんだ」
実家を出た私が、どうして実家の塗装をするの!と妻に怒られることを覚悟していたのだが、翌日、妻は100万円を用意してくれた。
親に話せば断られることは分かっていたため、勝手に実家の塗装を業者に依頼した。
それから、数年後、久しぶりに実家の画像をネットで見ると、実家は塗装をされキレイになっていた。
その画像には、ボカシは入っているが私の両親も映っており、2人して仲良く庭仕事をしていた。
妻、「良かったね塗装をして」
私、「君の実家も塗装をしたら?」
妻、「私の実家は塗装をしなくても大丈夫。塗装の代わりにバックを買って」
娘、「私もバックが欲しい」
2つ合わせて100万円近くする高級バックを買わされてしまったが、私は幸せな人生を送っている。”